教育



 私たちの研究室では以下のような教育を進めます。スタッフは「研究内容」にあげた研究を進めますが、学生諸君はこれにさまざまな形で参画します。


学部生

1,2年生:1,2年生には授業を通じて生態学や保全学を教えますが、研究室ではさまざまな活動をしていますので、気楽に参加してください。ひとつは毎月の「麻布大学野生動物学セミナー」に参加してください。研究の現場の話をわかりやすく話してもらいます。また、先輩について調査の手伝いをするのはよい勉強になります。それから、交通事故のタヌキなどの解剖、材料採取をしています。その頭骨標本作り、サンプルの処理、種子標本・植物の押し葉標本作りもしており、人手があると助かるので研究室(獣医学部棟211)をノックしてください。

 野生動物学研究室ではさまざまな活動を「縦割り」、つまり1,2年生といっしょにおこなっており、とくに大学祭では展示をおこなっています。展示内容を理解し、それを市民にいかにわかりやすく展示するかは、とてもよい体験になります。ぜひ参加してください。


3年生:3年生から研究室に配属になります。2年間かけて卒業研究に取り組みます。人によっては3年生の早い段階でテーマを決め、データをとる人もありますし、じっくりと体験しながらテーマを絞っていく人もあります。基本的には本人の関心を活かすものとしていますが、研究上の意義や実現しやすさも勘案して決めていきます。学生の希望は対象動物によるものが多いですが、内容(たとえば動植物の相互関係とか、行動学、あるいは外来動物とか被害問題など)も重要です。

 野生動物学研究室での研究では動物生態学、管理学、個体群学、動植物の関係などや、それらについての演習や実習を体験することが必要なので「動物人間関係学コース」の講義をとるのを原則とします。動物園動物を対象とすることも積極的におこないたいので、動物園概論も選択することを期待します。

4年生:4年生になると研究室のさまざまな活動においても主導的な役割をしてもらいます。卒業研究については、3年生の秋くらいから本格的なデータをとる必要があります。というのは秋からは卒業論文をまとめる準備にとりかかるからです。解析、執筆までをおこなうのはたいへんなことです。それだけに3年生のときから卒業研究に向けて準備をしておくことが必要です。

 とはいえ、卒業研究は広い意味でのトレーニングです。こじんまりしたきれいな結果を求めるばかりでなく、果敢に困難なテーマに挑戦することもけっこうです。その場合、何を目的にどこまでを明らかにしたかのロジックを明晰にしておく必要があります。そのことが満たされていれば、「ここまでは調べたが、結局わからなかった」という卒論でも及第とします。なぜなら科学は事実と論理に立脚するものであり、そのことが満たされていれば十分科学的だからです。このことはもちろん、いいかげんな計画でデータもとらずに「わからなかった」ということとはまったく違います。

 平成22年度には9人が卒業しましたが、いずれも充実した内容でした。なかには修士論文級のものもあったと思います。発表会でも自分の主張を伝える努力が十分になされていました。


大学院生


 大学院では専門的な研究テーマに取り組みます。研究に意義づけが必要になります。ユニークさと同時に普遍性も求められます。その研究内容が学術論文になるようなテーマを見いだし、十分なデータと解析が求められます。当然、関連の文献を勉強し、その分野の専門的知識をもつことが求められます。


地元の人々との協力

 
野生動物の生態学研究の基本は野外調査です。野外調査をするためにはもちろん体力や観察眼が必要ですが、それと同じほど大切なのは社会人としてのマナーです。というのは調査は一人ではできないからです。ことに人によって維持されている里山ではその土地の所有者やそこを調査しているほかの人々と仲良く調査を進めなければなりません。大学の実験室で実験するのとはまったく違うのです(実験にもマナーが必要なことはいうまでもありませんが、それは大学の内部でのことです)。そのためにはきちんと挨拶をすること、譲り合うこと、一人よがりな言動を慎むことなどが不可欠です。昨今若者のマナーが悪くなったとよく言われます。私たちは里山プロジェクトをそのような社会人としてのマナーアップの教育の機会ととらえています。そこでの体験は大学院に進むにしても、就職するにしても必ず役に立つと信じています。


シカのサンプリングに協力するハンター


標本について


 現在の生態学は理論や現象が偏重され、生物そのものが軽視される傾向がありますが、これはたいへんいびつで危険なことです。生物学の基本はなんといっても動植物をよく知るということですが、その最良の方法は「実物に触れる」ことです。さまざまな「触れ方」がありますが、標本はその代表的なものです。私たちの研究室はできたばかりで標本の蓄積はありませんが、哺乳類の骨格、食性分析用のサンプル、植物の押し葉標本、種子標本、昆虫標本などを作成して蓄積をはかるつもりです。

 
ヒグマ(左)とニホンザル(右)の頭骨標本



 標本は利用するだけでなく、作成することでその動植物の特徴をより深く理解することができます。さいわい本学は解剖学の伝統があり、設備も充実しているので哺乳類の解剖とそれによるサンプル採取や標本作りには好条件を備えています。その条件をいかして、積極的に標本作りをしたいと思います。
 研究室ではロードキル個体(タヌキやアナグマなど)、シカの頭骨、植物の押し葉などの標本作りをしています。1,2年生でも興味のある人は手伝ってもらうことがたくさんありますので、研究室をノックしてください。



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